19世紀フランス製 トランスファープリント陶器プレート
19世紀中頃、フランスでは寓意や風刺をテーマにした「Assiettes Parlantes(話す皿)」が流行しました。
本作はそのシリーズの中でも希少な「Poissons(魚座)」をモチーフにした一枚です。
プレート中央には星座を象徴する寓話的な場面が描かれ、当時の社会風刺や道徳的テーマが込められています。
周囲には花冠や装飾モチーフが配され、見事なバランスで構成された19世紀転写陶版技術(transferware)の代表作のひとつといえます。
中央の場面は、明らかに「仮面舞踏会」または「カーニバル」を描いています。
この図柄は19世紀フランスで2月(février)に行われていた謝肉祭(Carnaval)の風俗を象徴しており、
仮面をつけて身分や素性を隠すことで、普段とは違う自分を演じる人々を表しています。
製造とデザイン
裏面にはトレードマークが確認でき、フランスの名窯が手掛けたオリジナル・シリーズであることを示しています。
黒一色の銅版転写(black transfer print)はこの時期特有の手法で、細やかな線と陰影の表現が非常に繊細です。
絵柄の題字 “Février — Les Poissons” が明記されており、星座シリーズの中でも二月生まれ(魚座)を象徴する構図となっています。
歴史的背景
「Assiette Parlante」は、19世紀初頭〜中期にかけて流行した装飾皿シリーズで、
当時の民衆文化・風刺画・教育的モチーフを陶器上に転写したものでした。
単なる食器ではなく、社会風俗や価値観を映す“語る陶器”として愛され、
現在ではコレクターズアイテムとして高い評価を受けています。
状態・サイズ
直径:約 19,5 cm
アンティーク特有の経年感、わずかな釉薬のムラ・貫入がありますが、保存状態は良好。
時代を感じさせる自然な風合いがそのまま残っています。
静かな美と知的な風刺を併せ持つ、まさに“語るフランス陶器”
展示、コレクション、または美術的研究にもふさわしい一枚です。
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